トレーナー達はいろいろなハンドシグナルを使って、イルカ達にトレーナーがどう
いった行動を望んでいるかを伝えます。
イルカは決して視力はよくありませんが、物理的に区別できれば、ハンドシグナルを
きちんと見分ける事はできます。
ではイルカ達はどうやって、個々のハンドシグナルの意味を理解してゆくのでしょ
う。
前回と同様に「ジャンプ」で考えてみましょう。
ジャンプをした時に毎回お魚を上げれば人が現れると頻繁にイルカがジャンプするよ
うになるということは前回書きました。
さて、ここでは「人が現れる」ということがジャンプのシグナルになっています。
A「人が現れた時に」→B「ジャンプすれば」→C「お魚ゲット!」
注)上のA→B→Cは「オペラント条件付け」の基本的な考え方で、
Aは状況、Bは行動、Cは結果を表しています。
Aという状況において、Bという行動をすれば、Cという結果が出るということです。
「オペラント条件付け」については第3回のコラムでもう少し詳しくお話します。
「人」が見えることが視覚的なシグナルとなり、「ジャンプ」という行動を引き起こ
します。
(もちろん、人がいなくてもジャンプする時はありますが、ジャンプする目的が「遊
び」であったり、他のイルカに追いかけられて逃げ惑っている時であったりするわけ
で「お魚」をもらう目的ではありません。)
シグナルを「人が現れる」から「人が手を上げる」に変えていくには以下のように行
います。
@トレーナーがイルカの前に登場。もちろんイルカはジャンプします。そしてご褒美
ゲット!
Aイルカ達はまたご褒美をもらうためにジャンプします。さあ、この時に手を上げま
す。イルカはとにかくジャンプし、わけもわからずにご褒美ゲット!
Bさてこの辺から少しづつ、イルカ達に考えてもらうことにします。
トレーナーが手を上げている時に、イルカ達がジャンプした時は必ずご褒美をあげ、
手を上げていない時のジャンプにはご褒美をあげないことにします。
A |
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B |
|
C |
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「人が現れた時に」 |
→ |
「ジャンプしても」 |
→ |
「お魚もらえず・・・」 |
(残念) |
「人が手を上げた時に」 |
→ |
「ジャンプすれば」 |
→ |
「お魚ゲット!」 |
(ラッキー) |
C最初は手を上げていようがいまいがガンガンにジャンプしますが、次第に手を上げ
ている時のジャンプする回数が多くなり、手を上げていない時のジャンプの回数が少
なくなります。
D最終的にイルカ達は「人が手を上げた時に」→「ジャンプすれば」→「お魚ゲット
!」ということを学習します。
つまり、ホイッスルでイルカ達に何が良かったかを伝え、ハンドシグナルで
トレーナーの求めているものをイルカ達に伝えているのです。
ハンドシグナルは、言葉が通じない両者が生み出した、コミュニケーションを取る手
段の一つなのです。
(藤井 勝)
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