「強化の原理」は我々の日常生活に溢れています。例えば、大好きな人に電話をかけたら喜んでくれたから何度もかけるようになったり、車を買う為にお金を貯めたら欲しい物が手に入ったからまたお金を貯めるようになったりします。
我々の普段の行動を少し科学的に第3・4回のトレーニングコラムで一緒に考えていきましょう。そしてこの行動の原理を知る事が、動物とのコミュニケーションを行う際に非常に役に立ちます。まず基本的な行動の原理について述べます。
行動することで、その動物(人)にとって、何か良い事が起こったり(例@)、悪いことがなくなったりすると(例A)、その行動は繰り返されます(その行動は「強化」されて
いるといいます)。逆に、行動する事で、その動物(人)にとって、何か悪いことが起こったり(例B)、良いことがなくなったりすると(例C)、その行動はあまり起こらなくなります。(これを「罰」といい、その行動は弱化されているといいます)
例を挙げますので参考にしてください。これは非常に重要なことなのでぜひ覚えてください。
強化の例) |
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例@:イルカの場合 |
A |
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B |
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C |
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人がいる時に |
・・・ |
ジャンプすると |
・・・ |
お魚が貰えた |
(ジャンプする行動が強化されます) |
例A:人の場合 |
A |
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B |
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C |
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うるさい目覚まし時計の音 |
・・・ |
スイッチを押すと |
・・・ |
音が止まる |
(スイッチを押す行動が強化されます) |
罰の例) |
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例@:犬の場合 |
A |
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B |
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C |
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人がいる時に |
・・・ |
ゴミ箱をあさると |
・・・ |
叱られた |
(ゴミ箱をあさる行動が弱化されています) |
例A:人の場合 |
A |
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B |
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C |
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犬がゴミ箱をあさっている時に |
・・・ |
叱ると |
・・・ |
犬が逃げて戻ってこなくなった |
(犬を叱る行動が弱化されています) |
さて、強化の原理ではたいてい、「〜のとき、〜したら、〜になった」という関係が成立しています。「〜のとき」というのは行動が起こる直前の環境の事で、先行条件といいます。「〜したら」は行動。「〜になった」は行動の直後に起きた環境の変化のことで、結果といいます。先行条件と行動と結果の関係を行動随伴性といいます。英語に訳した時の頭文字がA(Antecedent)、B(Behavior)、C(Consequence)なので、行動随伴性を分析する事を別名、ABC分析といいます。
強化の原理では、ただ行動を増やすだけではなく、先行条件の元での行動を増やすこ
とに注意してください。
つまり例@でいうとイルカは24時間ジャンプし続けているわけではありません。
まわりに人がいる時にその頻度が高まるということです。
例Aでいえば人は目覚し時計のスイッチを同様に24時間押しつづけているわけではあ
りません。
うるさい音が鳴った時に押すだけです。
例Bは人がいる時にゴミ箱をあさる行動が減るということです。人がいない時はどう
なるかはわかりませんが・・・(笑)
例Cは飼い主さんの視点から見ました。ゴミ箱をあさっている大好きな犬を叱ったら
帰ってこなくなっちゃいました。次に何か犬が悪い事をしているのを見た時、あなた
は自信を持って叱れますか?
第3回のコラムはなるべく皆さんにわかりやすいようにチャート式にしてみました。
今回皆さんに知ってほしいことはある行動は決して無条件に起こるわけではなく、実
はある先行条件の元で起こるということです。最後にもう一つだけ強化の例をあげま
しょう。
仕事帰りに居酒屋に寄って、ビールを注文するととても美味かった!
その後、ビールを注文することが多くなった。(ビールを注文する行動が強化されて
います)
A |
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B |
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C |
居酒屋で主人と目があった時に |
・・・ |
「生一丁」というと |
・・・ |
ビールが出てくる |
居酒屋のご主人と昼間に通りで出会ってもビールは頼まないでしょう?
以上。次回は「好子」と「嫌子」についてです。
トレーニングに関してご質問がある方はこちらまで(masaru@dolphinspacific.com)お便り下さい。(藤井 勝)
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