皆さんの中にはイルカのトレーナー達が首からホイッスルをぶら下げているのを見た ことがある方も多いのではないでしょうか? あのホイッスルをトレーナー達はどのように使っているのでしょう。 今回はこのホイッスルについてお話したいと思います。

イルカ達が何か「行動」をした直後にご褒美(例えばお魚)をあげれば、 その時にしていた「行動」をその後、頻繁に行うようになります。 (これを専門用語で「オペラント条件付け」といいます。)

イルカがジャンプした後で、そのイルカにお魚を毎回あげるようにすれば、 そのイルカは人が現れると頻繁にジャンプするようになります。

しかし行動の中にはその行動の直後にご褒美をあげられない場合があります。 例えば、イルカに「ただの」ジャンプではなく、「高ーい」ジャンプを教えるとしま しょう。 ご褒美として「お魚」を直接使う方法で考えてみると・・・ イルカが一番高くジャンプした瞬間に、 お魚を「エイッ」っと投げてジャンプしているイルカの口の中に直接放りこまなけれ ばなりません。しかし実際にはコントロールの問題で難しいですよね。

さあ、そこでイルカ達には訓練の初期の段階で、 事前に以下の手続きを行っておきます。

トレーナーはイルカにお魚をあげる時に一度ホイッスルを「ピッ」っと鳴らします。 そしてその後でお魚をあげることにします。 これを何度も繰り返すと、最初はイルカ達にとって無意味な「ピッ」いう音が、 次第にお魚をもらえるという情報を持った嬉しい嬉しい「信号」に変わってきます。 (これを専門用語で「レスポンデント条件付け」といいます。)

この手続きを事前に行っておけば高いジャンプを教えるのは簡単です。 イルカが跳躍して一番高いときにホイッスルを「ピッ」っと鳴らしておいて、 帰ってきた時にお魚を上げればイルカは「そうか!高くジャンプすればピッが鳴るん だ!」と学習するわけです。この時点でイルカにとってのご褒美は「お魚」だけでは なく、なんと「ピッ」という音も含まれてくるのです。

結論を言いますと、あのホイッスルの「ピッ」という音はイルカ達に何が正しい行 動だったかを伝える為に使用しています。 人間の場合でいうと「正解!」とか「それでいいんだよ」にあたります。 何気なく吹いているように見えますが、実はホイッスルのタイミングは、トレーナーの素質があるかないかの大きなポイントにもなるほど重要なのです。

皆さん参考になりました? では今回はこの辺で・・・

(藤井 勝)



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