皆様、こんにちは。日本は梅雨真っ最中という時期でしょうか?パラオは変わらず、暑い、暑い日々が続いています。さて、今回のコラムHusbandry training(ハズバンダリー・トレーニング)ですが、皆様はご存知でしたか?

「うちの猫は、爪がすごく伸びているのに、なかなか切らせてくれない!!」
「うちの犬、予防接種のときいつも吠えて、暴れて大変!!」


こんな理由で、頭を抱えていらっしゃる方に是非、知っていただきたいのです。
動物達はなぜ嫌がるのか?
まずはここに疑問をあててみましょう!

日々日常生活で学習してきた私達にとって、爪が伸びたら、爪を切る、病気にならないように予防接種する、という行動はあたりまえかもしれませんが、初めての動物達にとってはどうでしょうか?

・知らない場所 この中のいくつかが、急に動物の前に現れる!!
・知らない人
・見た事のない物
・聞いたことのない音
・感じた事のない感触
・経験した事の無い事


どうです、誰だって怖いですし、嫌がりますよね。
まずは、私達トレーナーはその動物のことをよく観察し、知らなければなりません。
生態、生活環境、個体べつの好奇心、警戒心の比率など、情報は多いにこしたことは無いでしょう。そして、トレーナー自体に動物が警戒心を持っていてはトレーニングをうまく進める事はできません。まずはトレーナーとの信頼関係を築いていくことが重要な事です。
(これは5月のコラムでお話したレスポンデント条件づけ:好子の手続きを使って築いていけますね。)

経験した事のないことを、急に要求される怖いですよね、Husbandry Trainingを行う前に 動物がその環境に慣れ、何が起こるのか、何をすればいいのか、そして作業に協力してもらう事を教えなければなりません。

もうひとつ重要になるのが、動物が、知らない場所、知らない人、見たことのない物、聞いたことのない音、感じたことのない触感、これら、動物の目の前に現れる刺激に慣れ、鈍感化することです。(これをDesensitization《脱感作》といいます。)

このDesensitizationは6月のコラムお話した、レスポンデント条件付け:嫌子での恐怖、嫌子を取り除く手続きとほぼ同じです。
動物が新しい刺激に対して嫌悪感、恐怖心を持たないよう、レスポンデント条件付け、オペラント条件づけを使って、動物にその刺激を少しずつ提示していくという手続きです。

例えば上の猫の場合
最初にこの猫を観察します。
次に猫の爪を切る場面を想像します。

@ 誰が切りますか? 信頼関係を築きます。
切る人に対するDesensitization(脱感作)が必要です。
A 猫はどういう体勢ですか? おすわり?
1番爪を切りやすい体勢はおすわり?
手足に触れても大丈夫?
手足にふれても大丈夫ですか?
伏せの方がいい?
その体勢を保てるように教えなくてはなりません。
B 何を使いますか? 爪切りの提示
爪きりを使う事を教えます。
人がどう動くかを教えます。
切る時の人の動きへのDesensitizationが必要です。
猫さん、良い子ですね♪
爪を嫌がらずに切れるようになりました!!

これらのことを教えてから、爪を切るという行動を少しずつ提示していきます。オペラント条件付けを使って、動物が落ち着いているときを上手に褒めてあげましょう。
動物が刺激に対して落ち着いていられる時間を少しずつ延ばしていき、最終的にはその作業が終了するまで協力してもらいましょう。

そして、作業する場所を変えてみましょう。家でも病院でも、どこでも爪が切れるようになればいいですね。これが最終目標です。
決して急いではいけません。急いで動物に嫌悪感、恐怖心を与えれば、またスタート地点に逆もどりなのです。

これを読んで、

『いままで動物が言う事をきかないと思ってきたけど、それは動物の何が起こるかわからない嫌悪感や恐怖心などの理由があるのですね。』

『時間はかかるけれども、動物に協力することを教える事ができるのですね。』

という意見が増えればうれしくおもいます。

私達の施設でもこれらの手続きを利用してイルカ達の健康管理や動物の移動を行っています。
次回はその様子とともに、より具体的にHusbandry training(ハズバンダリー・トレーニング)をお届けしたいと思います。

(千田 文子)






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