みなさま、強化の原理を覚えていますか?

「動物(人)が、行動した直後に→何かが起こる→その行動は繰り返される」

この時の「何かが起こる」にあたるのが、好子で、動物(人)が好きな、喜ぶ物や事、すべてでしたよね。
(忘れてしまった!!という方は、1月の第4回のトレーニング基礎知識を、読み返してみてください。)

トレーニングを行うには好子が必要不可欠なのです。
今回はこの好子をたくさん作ることのできる対提示手続きについて、もう少しお話したいと思います。

トレーナーはこの好子をトレーニングの始めの段階でできるだけ多く確立しておく必要があります。
なかなか好子が見つからない!!という場合に、第1回のトレーニング基礎知識で、ホイッスルについてお話した手続きを利用します。

動物(人)のもともとの好子(生得性好子といいます。例:お魚)と何の意味も持たない「刺激」や「出来事」などを動物(人)に時間的に近づけて、繰り返し提示することで最初は動物達(人)にとって何の意味も持たなかった「刺激」や「出来事」も好子(習得性好子といいます。例:ホイッスルの音)になるという非常に便利な手続きです。例えば、ホイッスルを吹いた後に魚を与える。

これが、対提示手続きです。
 
生得性好子 他の好子と対提示しなくても好子である「刺激・出来事・条件」のこと
例:食べ物 / 水
習得性好子他の好子と対提示されることで、好子として機能を持った「刺激・出来事・条件」のこと
例:お金 / ホイッスルの音


例えば・・・
生きるのに必要な食べ物(生得性好子)を買う時に使うのは、お金(習得性好子)です。

赤ちゃんがお金を貰っても自分の欲しい物を、お金を使って買った経験が無いので、1万円 を貰っても喜ばないと思います。しかし、成長の過程で、1万円で自分の好きな物が買えることを学習すれば、1万円を貰った時点で嬉しくなります。

何の意味を持っていなかったお札の紙 が、自分の好きな物と対提示されることにより、お札の紙が好子となります。
このように自分の経験により、何の意味も持っていなかった刺激意味のある刺激へと価値が変わる原理を
「価値変容の原理」といいます。(習得性嫌子につきましても同様です。これにつきましては、対提示手続き Aでお話致します。)


ご家庭で動物を飼われている方で、餌を取り出すときに開ける『バリッ』という袋の音や、餌の入れ物を床に置くときの『カタン』という音に反応して、もの凄い勢いで駆け寄ってくる動物の姿を目にしたことはありませんか?
それではここで問題です。

おやつを取り出す袋の音は、動物にとって生得性好子?習得性好子?どちらでしょうか。

・・・この文章を読みながら「習得性好子!」と思わず叫んだ方に3000点!「正解です!!」

『バリッ』の音は始めは何の意味も無かったはずなのに、この音の後に必ずおやつが貰える事により、おやつ(生得性好子)と『バリッ』の音が対提示されたことによって、音は動物にとっての習得性好子となりました。

これも対提示手続きにより、この音はその動物の好子になっています。

また、せっかく買ってきたボールにうちの犬は無反応!あーあ、もったいない!!と思っている方はいらっしゃいませんか?
このような問題も解決できるのです。おなじように、犬に、餌やおやつを与える時、そのボールを一緒に見せることを、繰り返し行ってみてください。
犬はそのボールを見ると駆け寄って来るでしょう。
その後に、ボールでの遊び方を教えてあげればいいのです。

うちの施設でも同じようにイルカ達の好子がたくさんあります。

** 胸鰭にタッチする ** ** イルカのくちばしの下を2回ポンポンと触る ** ** おもちゃを与える **


なぜ、できるだけ多くの好子を確立しておく必要があるのでしょうか?

魚、食べ物がない状態、トレーニング中以外でも、動物がいい行動をしたら褒めてあげることができる。
魚、食べ物も動物のお腹がいっぱいの時や、体調が良くない時には、好子にならない時がある。
(逆に嫌子になる可能性もあります。)
何種類も好子があると次に与えられる好子が何かわからないので動物にとって刺激的となりやすい。


また、たくさんの好子を持つ事によって、その好子と結びついているトレーナーは、動物達にとって大きな好子となっていき、動物達との信頼関係につながります。
トレーニングをスムーズに進めるために、大きな役割をはたすのです。

私たちも、日常生活において、いつも笑顔で、元気で、楽しい、やさしいと、たくさんの好子を持った人になりたいですね。





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