今回は前回お話したShapingを使って、より上手に行動を作ることができるテクニックについてお話しましょう。
まずは、私の施設でのトレーニングの様子です。
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@ターゲットにタッチする事を強化する |
Aターゲットにタッチする事を強化する |
B少しターゲットの位置を高くしてターゲットにタッチする事を強化する |
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C少しターゲットの位置を高くする |
D少しずつターゲットの位置を高くする |
E少しずつターゲットの位置を高くする |
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F少しずつターゲットの位置を高くする |
G少しずつターゲットの位置を高くする |
H少しずつターゲットの位置を高くする |
このように前回もお話ししましたが、少しでもしてもらい行動に近い行動をしたら強化しながら、少しずつ強化の基準をあげ、してもらいたい行動に近づけていくのです。
さて、知っておくとより上手に行動を作ることができる方法とは・・・。
基本的なことですが、トレーナーは動物に行動を教える前に教える行動の『完成形』やその完成形に近づけるための『方法』『段階』を考え、しっかりと頭の中で描き作っておく必要があります。
Jumpの例でいくと、ターゲットにタッチすることを学習したからといって急にターゲットの位置をトレーナーの肩の高さ、水面から1メートル以上にもあげてしまうと、きっと動物はあまりにもの高さにしりごみしてしまったり、あきらめて全く動かなかったり、失敗してしまうでしょう。一度大きな失敗をすると、嫌悪感や恐怖心につながる事もあり行動の完成形までかえって遠まわりになってしまいます。動物が高さの変化の気づかないぐらい少しずつ高さをあげて成功の機会をたくさん与えて、いつのまにかJumpしていたというのが理想ですね。
例えば、jumpの行動を前向きの飛び方で、高く飛ぶように教えたい場合、前向きで高く飛んでくれるのを待っていたら、なかなか強化してあげられないですよね。ターゲットの誘導によって教えようとしても、初めから角度と高さを同時に誘導し、強化するのは難しいです。
そこでまずは角度、前向きにjumpする時だけ強化しましょう。きちんと飛ぶ角度を学習したら、次に高さ、高く飛んだときに強化しましょう。
というように部分ごとにわけ強化してあげると強化する部分も具体的に示せ、充分強化してあげられるでしょう。
新しいものを動物に提示するときは教えている行動の基準を少し下げてあげましょう。 |
いくら充分に学習している行動でも、新しい場所で行ったり、一緒にいる動物のパートナーをかえたりすると、その環境に慣れていないために、できていた行動ができなくなることがあります。私達だって仲のいい友達とカラオケによく行っていても、いきなり大観衆のまえに立たされて歌うのではいくら18番の歌でも、なかなかいつものように歌えないでしょう。 なので、新しい物・環境を動物に提示するときは、いつもより行動の基準を少し下げてあげましょう。
今の方法で動物の行動の学習が進まなければ、別の方法を考えましょう |
前回お話したように行動を教える方法は1つではありません。
イルカがたまたまJumpした時に強化したり(scanning)上の写真のようにターゲットを使って誘導したり(targeting)今行っている方法でなかなか成果が出ない時はもう一度プランを練り直して別の方法で教えてみましょう。
いくら事前に話し合っても、強化のタイミングや基準の上げ方には個人差があります。動物が迷わないように、その行動を学習するまでは1人のトレーナーが教える事が望ましいでしょう。
トレーニングは動物がいい成果を上げた時、調子のいい時に終わったほうがいいでしょう |
終わり良ければ、すべて良し!というように、トレーニングの終わりをいい状態で終わると、動物には強化された最後の行動がのこるので、次にトレーニングを行う時にもいい状態で行えるでしょう。
トレーニングゲームとは、2人でトレーニングが体験できる楽しい簡単なゲームです。1人が動物役、もう1人がトレーナー役になり、トレーナー役の人が動物役の人に好きな行動をこれまでお話したshapingを使って教えるものです。強化するときに使うホイッスルは、瞬間的に音がでる物なら、手をうつ音でも、声でもなんでもいいでしょう。またこのゲームを何回も行うなかで、強化のタイミングやshapingの基準の上げ方などが、身に着き、うまくshapingを使えるようになるトレーナーをshapingしてくれるゲームなのです。
私達の施設では実際にone day trainerという1日トレーナーの仕事を体験できるアクティビティでお客様に、このトレーニングゲームを体験して頂いています。
体験後、みなさんshaping方を理解し、トレーナーが強化するタイミングの重要さ、行動を教えられる動物の立場を体験されトレーニングに興味をもたれます。
是非みなさんにもトレーニングゲームをお試し頂きたいのです。
最後にセンダフミコのトレーニングコラムは今回で終了となります。
皆様、長らくお付き合い頂誠にありがとうございました。このトレーニングコラムを通して、トレーニングの原理が人と動物だけではなく、人と人との関係においても深く関係している事を知っていただき、ご興味を持っていただけたら嬉しく思います。
ありがとうございました。
(千田 文子)
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